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OS-006|某電線工場:設計プロセス課題の吐露

ー1 工場建築におけるデザインはどうあるべきか

本稿は1961年建築文化2月号に掲載された記事をもとに構成する。(若干時間が戻ります)。この電線工場 工場 鹿島 岡田新一の話をご紹介します。

「電線工場のデザインは、生産の場にユニティー(連繋)を考えるのが目的である。」

この言葉で記事は始まっているが、計画論の未発展だった当時は、なかなか岡田がイメージするようにな設計工程やデザイン理論を前提としていない。

若干「大丈夫か?」と心配になる愚痴まじりの記事になっている。もしかしたら、当時の時代的雰囲気を表しているのかも。

戦後15年が経過し、戦後の自由な思想を汲み、社会に出た者たちが実務の場で中心になりつつある時代。なんとなく、生意気な人たちがたくさん組織の中にいそうな感じが想像できる。

岡田(鹿島建設設計部)が、この電線工場で掲げた建築的目標は、

◇ 原材料、製品搬出入のサーキュレーション

◇ 工場そのものの成長の仕組みの提案

◇ (当時の工業地帯は埋め立て地そのままだったので、)防塵のシステム

◇ 原料が製品化される工程の流れに加え、人の動きの効率性に配慮した動線

の4つであった。

ー2 愚痴その① 生産プロセスが施主任せになってしまったこと

工程理解+環境理解+具象化は施主側の技術陣によって行われ、「これが入る箱をつくれ」という指令があって設計がはじまったという。

当時は当たり前であったが、大学時代、吉武泰水教授のもとで、建築の使われ方の調査を実践的に行ってきた岡田としては、少し物足りなさを感じている。

施主から与えられた条件は以下の4点だったようである。

① 電線工場であるため、長いスペースを必要とする

② クレーンは使わない(コスト削減)

③ 生産工程に塵埃は厳禁

④ スパン割りは25m程度

本当は、上記の条件について、合理性を見出し、建築家として回答を与える機会があってほしかったのだと思う。

しかし、鹿島建築設計部が示した回答は、非常に単純明快でわかりやすい回答であった。

① 建築に比べはるかに寿命の短い生産施設

建築がそれを限定しないように、24mグリッドに乗った鹿島傘型トラスの繰り返しによる計画。増築はユニットを増やしてゆく形で可能。

② 鹿島傘型トラスは、真柱以外は軽量で細い線材で構成。トラス梁を地組し、ウインチ等で釣り上げる簡易な工法の採用。

③ 塵埃はコンクリート壁により、気密性を確保。増築方向の壁のみ乾式工法の採用

④ 24mグリッドと、雨どい等を内蔵する柱、トラスボックスに内包する空調ダクトなどによる無柱空間

このように、施主のエクスキューズに対して1対1で答えるシンプルなプレゼンテーションを行った上で施主の合意を取り付ける打ち合わせを行ったという。

ー3 愚痴その② 人間のための場づくり

施主からの要求には、労働環境に関する要望はない。

そういう時代といえばそうなのかもしれないが、岡田は、防塵に影響のない窓の提案をしている。また、実現しなかったようだが、照明、色彩、休憩施設などの提案の不足を(やわらかく)批判している。

ー4 スピーディーな架構工事

ほんとかな、と思ってしまうが、三角形のトラスを地組し、4枚の端部を釣り上げ、4枚を結合する。柱を中心にして、傘状になった構造体をリフトアップする工法をとっている。

架構自体は2日で完了するということなので、当時の構造技術としては、アグレッシブなものに思える。

不合理さを徹底的に排除した計画アプローチ、じつは65年前の記事にワクワクしている自分がいる。

ー5 愚痴その③ 設備条件に対する批判

雑誌に記載されている電線工場の設計条件を記載しておくと、かなり過酷な条件での設計となっている。

それでも、井戸水のスプレー予冷による外気取り入れ、室内の空気清浄を保つためのエアフィルターを介した循環換気併用の省エネ化などを行っている。

柱に雨どいを内包したり、構造グリッドに沿ったダクトワークでの吹付など、無駄の少ない工場設備計画を行っている。当時としてはかなり先進的な仕組みではないだろうか。(OS-003参照)

工場の空調設備条件(夏季室内29℃って)

ー6 現在の姿

実は、この電線工場、完成から60年以上経過しているが、現役である。

かなりのユニットが増築され、生産品種も増え、社会の要請に建築が対応してきた好例であるといえるだろう。

当例のような、先見の明に長けた設計は鹿島建設設計部の真骨頂として賞賛されてよいと思う。

ー7 工場建築だから目立たないのかなぁ?

このように、岡田としては「なんだかなぁ・・・」と思いながら設計した30歳くらいの作品。

それでもこれだけの実績が残せる才能があったことに大建築家の力量を感じざるを得ないのである。

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