ー1 イギリスにいってみたいけど、行ってないんです
これも、大学生の時に「イギリス、いってみたいなぁ」と思って購入した本です。イギリスの公営住宅近くのパブに関する内容が書いてありました。読んで、さらに行きたくなったのですが・・・・。昨年ドイツに留学させた息子に先を越されてしまいました。理不尽極まりない。
ー2 サブタイトル「建築に見る伝統と創造性」に関して
かなり古い本なので、当時と状況はだいぶ違うのかもしれませんが、教会、パブ、その周りの集落という単位は、イギリス人には染みついている単位だといいます。
日本も、「村の鎮守の神様の~♪」のくだりの童謡に見られるような門前町、集落の形態は今でもなくはないですが、建築的なシンボル、という役割とはちょっと違う感じがありますね。
それからパブの文化は、うちの息子も体験してきたようですが、本当に深く根付いていると言っていました。
ただ、ロンドンオリンピック前の本だし、やっぱり自分で見に行かないと、という想いは強くあります。
しっかり仕事をして余裕を作らなきゃ。
ー3 で、経緯から「住宅とコミュニティー」の章を再読
イギリスも日本と同じで、第二次大戦で、ドイツからの爆撃等を受けた結果、早急な住宅供給が必要な状況に迫られていました。
両国の政策過程は、様々な資料がありますので、興味のある方は、ググってください(笑)。
わたしが目を通した資料は以下の資料です。
発行は2024年11月ですから、最近のイギリスの住宅政策を踏まえての資料と思われます。
イギリスの街づくりに学ぶ 鍋島紀美代 氏https://machinami.or.jp/pdf/machinami/machinami090_22.pdf
ー4 ストックに対するポジティブな評価
イギリスは第一次大戦後、第二次大戦後と波状的に住宅問題に直面してきた現実があります。田園都市構想の影響が強かった第一次大戦後に整備された公的住宅は良質なものも多く、現在も利用されているそうです。
いいものを長くつかった方がいい、典型例だと思います。以下、鍋島氏の文章を抜粋しておきます。
この写真にも見られるように、「Council Estate(公営住宅団地)」として建設されたものには、団地全体のデザイン美を考慮し、円形(Beatty Road)(写真)や馬蹄形(Cockoo Estate)などの公共緑地を囲んで並木と共に
個々の住宅を配したり、コミュニティセンターなどの公共のランドマークをアイストップとしてまっすぐ連なる並木道沿いに住宅を配置する(Cockoo Estate)など、アーバンデザインの観点からも優れたものが多く、一見「ガーデンシティ」かと見まごうものもあります。イギリスに行ったばかりの1980年代、そのような住宅は私の眼には魅力的にうつり「いい家、こんなところに住みたい。」と言うと、イギリス人からは「えっ、カウンシル・ハウスじゃない。」という反応があり、一般イギリス人の「カウンシル・ハウス」への偏見のようなものを感じることもありました。
イギリスの街づくりに学ぶ 鍋島紀美代 資料より抜粋

ー5 高層住宅の不人気
東京では雨後の竹の子のように建設されているタワーマンションですが、イギリスでは1960年代くらいまで相当数建設されたものの、全く人気がないそうです。
これは連氏の本にも記載されていて、ローナンポイント団地のガス爆発崩壊事故が起こって以来、少なくとも公営住宅の新規建設の多くは、低層高密度型に移行したとのことです。
ストックとしての高層公営住宅の不人気は続くものの、低所得者向けの公営住宅として高密地域での住宅供給手段として以降も選択肢として建設は細々と続きました。
そういった公営住宅も老朽化が進みます。建替は難しく、改修等により長寿命化が図られます。しかしながら、そういった改修政策に法制度が追い付かずに起こった記憶に新しい事故が、ロンドングレンフェルタワー火災事故です。

1974年に、耐震化の法令改正を受けて建設された高層住宅ですが、長寿命化改修のため、外断熱をはかり、アルミパネルで被覆された形に改修されました。
外壁の耐火不燃性についての規制に経験的なストックが少なかったのが原因と思われます。こういったことも重なり、やはりイギリスではタワーマンションは人気がないそうです。
なお、日本では、1996年に広島の基町アパートで上階に火災が延焼した事例がありますが、その後の徹底的な検証があり、使用材料などは不燃性のものの使用が徹底されている状況にあります。
ー6 接地性と所有の工夫・まちづくりと親和性ある政策実行
結果論なのかもしれないですが、イギリスの住宅政策は複合的に進められているとのことです。特に労働党に政権が移行したため、低所得者層への住宅課題は政策の面で重要課題に挙げられているとのこと。
・ 戦前の公営住宅のストックを良質の公営住宅として継続利用
・ 住み替えの文化を生かしての人口密度調整
・ 公的セクターと個人・民間会社の所有権を折半することによる、住宅価格の抑制、または完全民間主体によるコーポラティブ。
・ いわゆる「田園都市構想」により残された大都市廻りのグリーンベルトの宅地利用
残念ながら、ロンドングレンフェルタワー火災事故の犠牲者は、低所得移民が多かったとあります。ヨーロッパ特有の問題として、そういった人たちに血税を使うことに対する軋轢は、ヨーロッパ諸国の右傾化と関係しているようです。難しいかじ取りが課され続けているには違いなさそうですね。
ー7 翻って、日本の住宅政策は?
神戸市が市中心街へのタワーマンション建設規制を打ち出したことが話題にあがっています。個人的な意見として、以下の背景を考えると、タワマンのスラム化が目に見えているので、多いに賛成です。
日本では近年顕著な傾向として、・・・・
・ 持ち家政策を公営住宅の建設と並行して進めたこと、
・ その背景から、集合住宅も、民間セクター主導による建設に移行
・ 高度経済成長の過程で公営住宅の整備のスピードを緩めていった
・ また、地下高騰により、都市居住のためには高層化という手段が必要。
・ 産業構造の変化により、都心港湾部に広大な余地が生まれたこと。
などなど、いくつかの事情が重なり、都市辺縁の低層住宅から都市居住のための高層住宅の建設というベクトルが強まっている状況があります。
空き家問題などは地方都市部で深刻化していますが、地方都市でさえ、住宅ストックがあるのにタワーマンションが作られる矛盾は、あまり健康的な状況とは言えないと思うのです。
性能の良い新築マンション、戸建ては確かに必要なんですけど、少なくとも新耐震基準(1980年以降)の建物については、安全性には大きな問題はありません。
公営住宅のストックは、外装の塗装ぐらいやり直したものを使用権分譲などで低価格で若い世帯向けに販売し、継続的な住居費負担を減らして若い世帯の可処分所得を増やし、子育てしやすい環境に活用するといった、大胆なやり方が選択肢として必要な気がします。
改めて、イギリス、一回いってみたいなぁ。以下は、連氏の動画です。