ー0 本日のお勉強
今日は、昨日の①で書ききれなかった住戸の中身を勉強しなおしました。建築計画学は、建物が人の生活を規定してしまう現実と、人が建物を設計し、使いこなすことの関係を解きほぐし、よき方向へ導くための学問です。公団の標準プランは、その真摯な取り組みにもかかわらず批判にさらされた時期がありましたが、その後の見直しの方向性は、単純さゆえに現在でも応用しうる知見であり、勉強しなおして良かったと思います。
「建築計画:実教出版1975年」の第5章:集合住宅の後半部分になります。図等は本書からの出典です。
ー1 公団住宅「51C型」をめぐって
戦後の荒廃した日本の住環境を限られた予算で早急に整える必要性と、男女同権、核家族化などの未来像との折り合いをつけるために「規定型、標準型」とされた、当時としては斬新な住戸「51C」型住戸が日本住宅公団によって規定されます。
この住戸の特徴は「食・寝分離」と「夫婦と子供の寝場所の分離」を実現するために、多くの試行錯誤の結果埋まれたものです。左と右の図の比較からわかるように、日本の住居の特徴である襖での仕切りを、壁を設けることで、個室性を高めているのと、台所兼食事室が設置されていることがわかります。

部屋の用途構成が明確でない、続き間の使い勝手をすて、住戸内の通風ルートを狭める選択は、「ウサギ小屋」という言葉があるように、部屋の狭さを助長する側面もあり、様々な批判にさらされたことも事実としてありますが、この平面から、「ダイニングキッチン(DK)」という考え方が定着し、今の日本人の住環境の基本が形成されました。
ー2 51C型に至る根拠研究
夫婦と子供という単純家族を想定するときに、子供がまだ小さいときには家族は1室に寝ているが、子供が大きくなり、次第に大きくなると、ある時期に2室に分かれて寝るようになる。これを「寝室の分解」と言っている。また、食事を「寝間」にちゃぶ台を置き、就寝時にはちゃぶ台を片付けて布団を敷いて寝るような生活が一般的であった。この2つの課題は、特に日本の世帯で起こる特徴的な現象といえます。

伝統的な庶民住宅の調査から、「寝室の分解」と「食寝分離」を同時に行うにはどうしたらよいか、工夫を考えたときに、室内にも機能グルーピングの考え方を取り入れ、機能の整理を行ったのが51C型の設計におけるこれまでになかった特徴です。
このように、模式図化し、設計の意図を伝える手法を「ダイアグラム」と呼んでいますが、右のダイアグラムは、平面の考え方を理解する上で非常に役立っています。

ー3 リビングの要求
その後、高度経済成長に伴う生活水準の向上にともない、家族内でも「公・私」の分化傾向がでてきたことが記載されている。テレビといった、家族全員で行う「活動」の数が増え皆でいられる場所の要求が発生してきたということです。ただ、この本が書かれた時代は「LDK」型の住戸は確立されていなかったようです。
鈴木先生は、いまでこそ普通の「LDK」タイプのプランニングに対して、自身の案を添えて、以下の予見を示されているところが興味深いです。
◇ 集合住宅の場合は、(リビングの)しつらえの下地を作るのにとどめざるを得ない。しかし、だからと言って、それは無限定な白紙の空間を作ることを意味していない。白紙の空間はかえって居住者のしつらえを生み出さない。
◇ むしろある程度の空間の規定性、すなわち、落ち着き、囲み、方向性、変化等を備えた空間を提供することがさらに、しつらえの意欲を誘発することにもなろう。
◇ 適度の凹凸、出窓、天井の高さの変化は有効であろう。

ー4 仕事のための空間
昔においては「家内制手工業(鞄、靴職人)」という職種が自宅に仕事場を置いていた代表ですが、今日においては、フリーランスワーカーといった新しい働き方をする人たちにとっては、仕事場を住宅の中に確保するkともテーマの一つとなってきています。外部からの出入りや、騒音、振動の処理などにも注意すべきです。
また、昼夜逆転の生活(トラック、タクシードライバー)といった人がいる家庭では、昼間寝るための部屋が必要です。
現代においては、そういった課題にも対応できる住環境が求められている状況があるともいえるでしょう。

ー5 順応型の住戸計画
上に示すような、すみこなし方が51C型をはじめとする標準プランでも行われてきたが、6畳間2室では限界がある。そこで順応型住戸の計画が必要となってきました。鈴木先生は、順応型プランにおいて、中心課題となる点を2つ上げています。
① 可変間仕切り方式の決定
家具間仕切り、あるいはパネル(襖)間仕切りが一般的であり、これらの組み合わせも考えられる。収納家具を間仕切りに使うのは最も現実的で、素人でも比較的容易に、模様替えができる。もちろん、いずれの方式にしても、耐震化などの固定の問題を躯体、家具、パネル両側の面からシステム化しておく必要がある。

② 固定部分の構成
順応型住宅において、固定部分(主に水回り)の構成は空間の基本的な性格を決定する。

ただし、これらのバリエーションを一つの集合住宅の中に混在させることは、相応の困難を伴うことから、集合住宅の全体計画の中で論じられる一面もある。しかしながら、家族の成長に対して室数を増やす、減らすといったことが、ある程度の工夫により行えることは住宅としての基本性能を高めることにつながるため、大いに論ずべき課題であると思われる。下に(C)の場合のバリエーション展開を示す。

ー6 おわりに
建築計画学が探求してきた集合住宅の住戸についての歴史を概観してみた。分譲マンションの設計を行ったとき、ー5の可変性のモデル化が理解できていないと、分譲マンションのプランニング提案などは、できない。その点で、一応、まじめに勉強してきたことが役だった部分はあるのかなと満足した。
とはいえ、公営住宅はもとより、分譲マンションでさえ、年と共においてゆく世帯に対して、積極的に働きかける仕掛けは提案できていないと思われる。
私もそうだが、持ち家を決意した場合は、少なくとも数十年は同じ場所で過ごすわけだが、そうそう、リフォームにお金をつぎ込むことは難しい。
建築計画系研究室出身の建築家としては、なにか、落としどころを見つけて、定住環境の根底をなす条件を底上げしていきたいと考えている。